クチコミズム〜1月のベストテン!

shimizu43102009-01-31

1.犬と猫と人間と(2009年/監督:飯田基晴)
人間の都合で「商品」にされたり「家族」になったり、そうかと思えば「ゴミ」として捨てられたりと悲惨な目に遭っている日本の犬猫さんたちと、彼らと日々接している様々な立場の人々を丹念に取材。"柔らかな社会派"飯田監督が、かなりシリアスな局面も逃げずに見つめていく姿勢に脱帽。観客全員が「空想」の手前の「手の届く理想」を目指したくなります!
▽2月22日 田町(三田)・女性と仕事の未来館で上映!
http://homepage2.nifty.com/lowposi/

2.東條を倒せ〜中野正剛と東方会(1984年/演出:片島紀男)
昨年暮れに亡くなったNHKの名ディレクター・片島紀男さんの、九州勤務時代の出世作。東條独裁政権の「抵抗勢力」として闘い、そして敗れた野党・東方会の知られざる歴史を、当時ご健在だった各地の元・党員たちの証言と、成田三樹夫さん扮する中野正剛の再現ドラマで織りなしていく展開は、翼賛選挙の裏側の激しい弾圧の様子が生々しく伝えられて、サスペンス映画を見るような緊迫感に満ちています。三鷹事件帝銀事件ゾルゲ事件などなど、昭和史の事件(ヤマ)を掘り続けた片島さんの作品世界を、今こそどこかでキチンと特集上映してほしいです!
http://archives.nhk.or.jp/chronicle/B10001200998412080130089/

3.東京五人男(1946年/監督:斉藤寅次郎)
喜劇の神様・斉藤監督が贈る「戦後最初のお正月映画」は、キレイサッパリ破壊された東京の焼跡でエンタツアチャコ・ロッパたちがドタバタを繰り広げる、文字通り「パンク」な傑作!オープンセットじゃない「本物」の被災地の迫力と、GHQ以外なら何を批判してもOKな「配給されたての民主主義」のアナーキーな空気に当てられて、見るとなぜか元気になります!
▽1月 日本映画専門チャンネルで放映済
http://www.nihon-eiga.com/prog/001790_000.html

4.色彩の記憶(2008年/監督:御法川修
ゆふいん「松川賞」受賞作、遂に劇場公開!「何を撮るか」とともに大事な「どう撮るか」に挑んだニュータイプの工芸記録映画。次にどんな展開が来るかワクワクするカット繋ぎに魅了されました。考えるばかりがドキュメンタリーじゃない、「楽しむ」ドキュメンタリーがあってもいい!
▽2月7日〜15日 東京都写真美術館ホールにて公開!
http://coloring-life.seesaa.net/

5.ナオキ(2009年/監督:ショーン・マカリスター)
NHKハイビジョン特集」が海外の監督に発注する「東京モダン」シリーズの一篇。他の監督が"ある意味わかりやすい"ガイジン目線で楽しませてくれる中、ただ一人ネチッこい人間ドキュメントにこだわった"いじわる"ショーン氏のBBC魂が結果的に目立っていました(笑)
▽1月7日 NHK-BShi「ハイビジョン特集」で放映済
https://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20090107-10-31310

6.書(1974年/監督:戸田金作)
劇映画の魅力が文学だとしたら、文化記録映画は「図鑑の魅力」!篆書、隷書から草書、行書、漢字かな交じりなどなど、書道の達人8人が次から次へと登場して腕をふるうスリリングな展開はまるで書道版『死亡遊戯』! 半紙に筆を下ろす…と思わせておいて、おもむろにタバコに火を点ける楷書の金田心象先生が超ダンディーでした(笑)
▽1月14日 短篇調査団(81)書の巻で上映済
http://d.hatena.ne.jp/tancho/20090114/

7.ある建築空間(1964年/監督:松川八洲雄)
「ハジケたPR映画ファンクラブ」(略称・HPF/会員数1名)が推薦する逸品!竣工直後の研究施設を「記念撮影」しようと発注したら、なぜか表現主義の映画が出来上がってきた…というサイドストーリーまで想像しちゃうスリリングな20分(微笑)。音楽の間宮芳生さん、助監督の飯村隆彦さんにも注目!
▽3月20日 neoneo坐「ゆふいん松川賞特集」で上映予定!
去年の上映情報→ http://d.hatena.ne.jp/tancho/20080320/

8.家計の数学〜生計費500圓(1946年/監督:竹内信次)
敗戦直後の”民主的な世論”形成を目論んだ映画時評シリーズ「自由の声」の一編なんですが、政府がインフレ対策として掲げた「一世帯の生活費は月500円で」という目標がいかに現実離れしているかを、わざわざコミカルに絵解きしてくれる情熱に脱帽。『東京五人男』と同様、GHQ以外は何を批判してもOKという製作姿勢で、時の日本政府をメッタ打ちにする「赤さ」が痛快です。
▽DVD「戦中・戦後 昭和の暮らし」に収録

昭和の暮らし第4巻 [DVD]

昭和の暮らし第4巻 [DVD]

9.鬼すべ(1983年/監督:野崎健輔)
太宰府天満宮の節分の神事・鬼をいぶり出す「鬼すべ」の段取りが、世代交代とともに変化してしまわないように…という願いから、しきたりの細部までが丹念に記録された「神事マニュアル映画」。今も大宰府の皆さんはこの映画を参考にされているのでしょうか。煙モウモウの室内で鬼に豆を播く神主さんたちが、”過激派風”にタオルを口元に巻いているのがちょっと可愛かったです。
▽1月28日 短篇調査団(82)鬼の巻で上映済
http://d.hatena.ne.jp/tancho/20090128/

10.女と男(2009年/演出:水野重理ほか)
NHKスペシャル」ならではの底力と決めつけが遺憾なく発揮された(苦笑)科学ドキュメンタリー。こういう企画はどれだけ「大胆な仮説」を吹いてくれるかが醍醐味ですね!夜9時の総合テレビが「人間の精子は薄い、しかも質が悪い」なんて力説してる光景にニヤニヤ。
▽1月11〜18日「NHKスペシャル」で放映済、4月にDVD発売予定
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090111.html