00:18~
B:こんばんは。
S:始まりました。
K:こんばんは。「脚本家たちの深夜密談」です。
今週はちょっと、先週からの予告を変更しまして。
急遽、『セクシー田中さん』の話をしたいと思っております。
といいますのも、やっぱり、脚本家の深夜密談ということで、
脚本家の名前を課している以上、ちょっと、脚本家の立場からこの話をして、
ご理解していただきたいところもあるなという心から、急遽決めました。
なかなか勇気のある決断だったので、私たちだけでは心もとないので、
40年にわたってテレビドラマで活躍されている、伴一彦さんに、
急遽ゲストとして来ていただきました。
伴さん、どうかよろしくお願いいたします。
B:こんばんは。おじゃまします。
K:よろしくお願いします。
01:25~
K:伴さんのお話をお伺いする前に、
一応、ちょっとここまでの経緯を簡単にお伝えしますと。
まず、この件の発端というのが、12月24日に脚本家の方が、
そして1月26日に原作者である芦原妃名子さんが、それぞれ、
なぜ『セクシー田中さん』の9話と10話を、
原作者である芦原さんが書くに至ったのかという経緯を、
SNSに投稿されるんですよね。
それを受けて、ウェブニュースなどでも取り上げられたり、
SNS上で大炎上し始めるんです。
当初はもう9割方、脚本家を責めるようなツイートが多くて。
「原作クラッシャー」だなどと、ひどい攻撃が挙がっておりまして。
1月28日、昨日になって、原作者の方が
《攻撃したかったわけではなくて、ごめんなさい》というツイートを残して、
アカウント(※正しくは「投稿」)を消されているんですよね。
その段階で、私自身も伴さんに、ちょっとこの話したいんで、
とお願いしてはいたんですけれど。
やはり当事者の方が、もう触れてほしくないのかな、というツイート、
消されているってことは、もう火消しにしたいのかなというので、
触れない方がいいのかなと考えたりもしていたんですけれど。
今日になって、芦原さんがお亡くなりになったというニュースが届きまして。
やはり、ここはちゃんと取り上げて、脚本家の、ドラマに関して。
この件に関して、私たちは当事者ではなくて、あくまでも報道やSNS上、
ご自身たちの発信で知ったことが全てですので。
憶測でものを言いたくないですし、業界関係者から新たな情報を、
確信もなく、確認することもなく、手に入れてお話しするつもりもありません。
あくまでも、今わかっている事実に基づいて、
ドラマ作りなど、あるいは脚色の仕方など、
どんなことを脚本家がして、どんなトラブルが、これまで起こったのかなどを、
お伝えできればなと思っております。・・・ということなんですけれど。
伴さんも、これまでの経緯をかなり、
チェックされているかと思うんですけれど。いかがですか。
04:19~
B:僕もツイート…Xでポストとかしたんですけど。
両方、原作者と脚本家、両方がお互いの意向というか、
意思を知らないで進んでしまっているのが一番の原因かな、
と思ったんですよね。僕は、全く原作者とは揉めたことがなくて。
K:そうなんですか。
B:そうですね。お友達になっているという方のほうが多いんですけれど。
その時も・・・いや、だから別に責めるというか・・・
番組って、脚本家が自由に書けるわけないじゃないですか。
監督が勝手に撮れる(わけでも)…やっぱりプロデューサーが、
全ての責任を負うんですよね。
番組の方向性だとか、どういうホン(脚本)にするとか、誰に書かせるとか。
そういうのは全部、そこはプロデューサーの仕事なので。
僕の見えないところで、原作者といろいろな交渉をして、
ドラマを成立させてくれたんだなとは、いま振り返ると思っていて。
つまり、トラブルをなくすのがプロデューサーの仕事、
という風に思っているので。
ただ、原作者の意図とかわからない時に、
話し合いをしたい、とこっちが言っているけれど、
やっぱり、間に入る編集者とか、プロデューサーが、
そこは会わせない方がいいと思ったのか。
お互いに忖度してくれているのか。会わずに話が進んじゃうんで。
最後に、打ち上げかなにかでお会いしたとき・・・記者発表のときかな、
お会いしたときに「面白かったですよ」って言ってくれたり、
みたいなことがあったわけです。じゃあもっと早く・・・
まあ多忙な作家さんだったので、会う時間はなかったのかも知れないけれども。
何かあったら、やっぱり直接会って話すと、誤解も解けるし、
やりたいことも再確認できるし、いいんじゃないかなと思いますね。
06:50~
K:そうですよね。私も、テレビに限らず、映画なんかでもそうなんですけど。
私の感覚からすると、やっぱり脚本家と原作者って、作家同士ですのでね。
性質上どうしたって対立したりする、しがちというか。
私は、して当然だと思ったりするところもあるんですよね。
ただ、そんなに・・・トラブルが全くなかったわけではなく、
やっぱりこちらが書いたものを、原作者の方からこういう要請が来ました、
みたいなことは、結構ありますし。そこで意見がぶつかって・・・
前ね、「ちょっとウチで話しましょう」みたいに呼びつけられて。
「あなたって本当に私の原作のこと、全然わかってないわね」みたいなことを
言われたこともありましたけど。
ただ、やっぱり基本的に、直接、脚本家が原作者の方と会うって、
なかなかないですよね。それはやっぱり・・・ですよね。
だから、そんなのを会わせたら、お互い対立するに違いない、
みたいなこともあったり。プロデューサーが間に入り、調節した結果、
原作者の要望も「10」聞くのではなく、「5」聞くことにして、
「5」は原作者の方に納得していただいて。持ち帰った「5」だけは、
こちらが説得されて直すとか。そういうことで仕事をしてきた経験があるので。
ツイッター(X)上で、脚本家が原作を全部変えている、みたいな発言を見ると、
とっても心が痛んだんですよね。
伴さんは経験上、ご自身で勝手に、
このキャラクターこっちに変更しますからって言って、通る・・・って、
どれぐらいの確率であります?
08:57~
B:いや、僕の場合、結構、そういう意味では、
原作から変えていることが多いんですよ。
例えば、ツイッターにも書きましたけど
原作は歴史小説家なんですけれども、それをやめて、探偵事務所にして。
探偵は助手がいるんですけれど、原作だと女性だけなのを、二人、男女にして。
後でもうひとり、子供も加わって、みたいな。
ほとんど原作のエピソードも使っていないんですよね。
K:あー、なるほど、なるほど。
B:でも、それに関して寺沢(大介)さんという原作者の方からは、何もなく。
プロデューサーが止めていたのかもわからないですけれども。
最終回のスタジオ収録のときに、いらっしゃるって。
僕はちょっとドキドキしてたんですけれども、
「面白かった」って言っていただいて。
それから結構、一緒に飲みに行くようになって。演出家の悪口を言ったりとか(笑)
原作はほとんど使ってないし。噂を聞きましたけど・・・
犬がパートナーっていうのも、こっちで作ったやつだと思うんですね。
『ごくせん』(2000-07年連載)の、森本梢子さんという方が
原作者なんですけれど。何回目か進んだ時に、スタッフルームに
手描きのマンガ付きのファックスをいただいて。
「まいりました。本当に面白い。こういう漫画を描きたかった」
みたいなことまで書かれていたんですよ。
11:06~
K:そのお二人の原作に入る時に、その仕事を受ける段階で、
プロデューサーから、原作ってどれくらい変えていいですよ、
みたいな説明とかありました?
B:いや、特になかったと思います。
これをやるんだったら、こうしたいとか、こうしましょうみたいなの、
企画会議であって。大体そこで、まとまったかなと思いますよ。
K:やっぱりそれは、企画会議っていう、プロデューサーとの会議を経て、
決定することですよね。その企画会議で、
「いやいや、これは原作通りにやってください」って言われた時に、
伴さんであったとしても、なかなか変えられるものではないんですよね。
B:「原作通りにやれ」っていうことですか?
K:会議上・・・つまり伴さん独りの力で、変えられるものなのかな、っていう。
B:それはもちろん、同意がないとできないですよね。
K:できないですよね。
B:僕がやる時はだいたい、プロデューサーと一緒にホン(脚本)を作ることに
していて。監督は後から入ってくるんですよ。出来上がったホンで。
ただ、『デカワンコ』の場合は現場に、すごい面白い監督がいて。
現場で思いついたことを入れたりとか。それは僕のシナリオからはみ出してる、
原作からもはみ出しているんですけれど。
でも、それも面白がってくれてたんですよね。
12:58~
K:原作者の方の中には、やっぱり二種類いるなと思っていて。
原作は原作、映像化は映像化で全く別物なので、もうご自由にどうぞ、
出来上がりを楽しみにしています、というタイプの原作者さんも
少なからずいらっしゃるし。今の2ケースの場合は、
そういう原作者さんだったのかな、っていう気もするんですけど。
その一方で、特に、初めて書いた本です、小説ですっていう
原作者さんに多いのが、自分にとってすごくこだわりがあるので、
原作はなるべく変えてもらいたくないです、
っていうようなケースもありますね。
前々回かな、「深夜密談」でも話題に出た、
『やわらかい生活』(2006年)の原作者さんも、
本当に思い入れのある小説なのでということで、
ちょっと裁判になってしまったりとか。
14:50~
B:・・・東野圭吾さんって、どっちタイプなんですか?
K:私は、東野さんやったことないので、よくわからない。
ただ、作家の方でも、「作品による」ケースも結構あるんですよね。
この作品だったら自由にやってください。でも、これは・・・
っていうのがあって。だから私の場合は、原作で企画が来た段階で、
「原作者の方って、どれくらい変えていい方なんですか?」ってのは、
まず聞くようにしてますね。っていうぐらい、ちょっと最近は、
やはりこだわられる方が増えているかなーと。以前よりも、感覚として。
B:実は、東野圭吾さんが乱歩賞を取った、
『放課後』っていう作品を脚色しているんですよ。
K:はい、はい、はい。
B:「木曜ドラマストリート」(1986年・フジテレビ)かな。
それは高校が舞台だったので、ちょっと青春寄りな、青春ものっぽいノリで
書いたんですけど。それに関しても、東野さんとは会っていないし。
なんか意見を聞いたこともないんですよね。
放課後 - ドラマ詳細データ - ◇テレビドラマデータベース◇
16:03~
K:ただ、やはり今回の場合、実は特殊なケースだったんだなって
後からわかったのが、ドラマ化を許可する段階の条件として、
「原作通りにやってください」という要件が出されていたっていうのが、
今回の場合、かなり特異なケースだなとは感じたんですよね。
ただ・・・これを受けてしまった、というか、
伴さん、可能ですか?と思うんですよね。
映像化するにあたって。原作まんま、みたいな。
B:うーん・・・何をもって「まんま」というのか、
だって媒体が違うわけだから。絶対同じものものにはならない。
K:同じものにはならないですね。なんですけれど。
それをどこまで、できる限り原作を生かす方向でいきます、
みたいな説明がなされたのかとか。
やはりその辺りが、まずどうだったのかっていうことと。
あと、その点をどれだけ脚本家に伝えていたのか。この二点がわからないので。
B:脚本家のインスタを見ると、それは全く伝わってない感じですよね。
(作家の)丸山正樹さんが(Xに)書かれていたけれども、
こういうのは「約束事」の問題ですよね。良い悪いとかではなくて、
そこがちゃんと伝わっていない。両方が思っていることが違うっていう。
違っていた、ということですね。
話がゴッチャになっている。原作者が言いたいのは「改変の良否」ではなく「約束と違う」ことでは。約束を守らなかったプロデューサーの責任で脚本の問題ではない。さらに契約書に明記されない「口約束」であることが大本の原因。そこから改めない限り同じことが繰り返されるhttps://t.co/VDxkJf2kYx
— 丸山正樹 (@mamaruyama) 2024年1月27日
17:54~
K:こういうのって普通、契約書みたいなものって、交わすんですか?
B:(放送)局とは交わしていると思うんですけれど、僕は一回も、
原作者と局が交わした契約書を見たことがないです。
K:脚本家の側が見れるものではないんですね。
B:そうですね。どういう約束をしましたか、みたいなことを聞くことは、
可能かと思うんですけれど。
僕は聞いたことはなくて、そういう質問したこともないですけれど。
ただ、『七瀬ふたたび』(2008年・NHK)って、筒井康隆さんの原作の作品を、
NHKでやったことがあるんですけれど。
その時にはもう、プロデューサーが筒井さんに、
「こういう風に変えたい。なぜなら、こういう理由で」・・・みたいなことを、
愛をこめた文章でメールを送られて、というところから始まったみたいですね。
(登場人物に)ヘンリーっていう黒人が出てくるんですけれども。
ちょっと時代的にも、今の時代は黒人が上位にいて、下位にいてみたいな……
超能力の話ですけれど、それはちょっとまずいかな、っていうものもあって。
日本人に変えたんですよね。ヘンリーというあだ名の・・・
それも、こういう理由で、みたいなことを言って。
テレビ化をOKしてくれたと思うんですよ。
で、筒井さんの場合は、本当に台本を隅から隅まで読んで。
原作者チェック以上に、「ここは、この台詞はつながっているか?」
みたいなことまで、毎回メールをいただいて。
それを、プロデューサーが僕に直接見せてくれたんですよね。で、直した。
まんま直したか、ちょっと忘れましたけれども。
そういうやりとりを、やりました。
始まる前は、原宿のお宅にも、挨拶というか、
説明に行ったこともありますけどね。
20:14~
K:伴さんの今の話を聞いて、なんとなく問題点がわかってきたな、
って感じたのがですね・・・。
とある原作者の方が、すごくドラマ化にあたって揉めている最中に、
その原作者の方と、会ってお話する機会があったんですよ。
私は関わってなかったんですけど。その方が言うには、
「別に変えてくれてもいいんだけど、変えるなら変えるなりの理由を
説明してもらいたいんだよ」っていう。
そういう辺りを、ふわっとしたまま変えられても
納得いくわけないじゃないですか、と仰ってて。
全くその通りだなって思ったんですよね。
こっちだって、他の方の原作を変えるには、
変えた方がいいって確信がなかったら
安易に変えているわけじゃないじゃないですか。
で、それをどれだけお伝えして、納得していただけるかっていうのは、
やっぱり丁寧なプロセスだし、時間が必要なんだと思うんですよ。
だけど、やっぱり最近のテレビドラマの撮影のスケジュールとか
制作のスケジュールを見ると、
そのスケジュールをとる余裕さえないような状況で
作られている場合も多いかなと思うので。
B:でも、そこは時間をかけるべきところですよね。
K:ほんと、そう思いますね。
S:だって、そこに時間をかけなかったら、原作者にも意図が伝わらないし、
脚本家にも原作者の意図が伝わらないから。結局、齟齬が発生して、
ずーっとそのまま行っちゃいますよね。
K:そうなんですよ。だから不信感だけが募って。
22:05~
K:ちょっとコメントいただいてるので、ロックキムラさん。
「芦原さんは最後の2話を、ご自身で脚本を書かれていますが、
全話をご自身で脚本を書く話はなかったのかな、と思いました」
いや、それは多分ご自身も、出ているニュースを読む限りは、
本当は書きたくて書いたわけではなかったという。
K:・・・推測はしないとは言いましたけど、
最初の約束として提示されていたんですって。
これは憶測じゃなくて、事実として出てるんですけれど。
(原作が)完結していないから、ドラマの「完結する話」に関しては、
自分のストーリーを使ってほしいし、セリフもそのまま書いてください、
っていう条件を出していたんですって、許諾の時に。
ただその最中で、すごく加筆(すべき要素)が多くて。
時間的なことも考えて、自分で書いた方がいいんじゃないか、
って決断されたんだろうと思うんですよね。
だからやはり、脚本は脚本家で、
最初のうちはきちんと任されていたんだろうと思います。
そんなに何か、無謀な要求をされていたわけでもないし。
ただ、やはり……芦原さんには芦原さんのファンもいらっしゃるし、
その脚本家さんには脚本家さんのファンもいるわけで。
そのファンの方々がそれぞれ、自分が好きな脚本家さん、
あるいは原作者さんに期待するものが多いし。
その期待に応えたいと思うのって、それは、お二人とも当然じゃないですか。
だから、ああいう説明に至ったんだろうと思うんですよね。
それぞれのファンの方は、それを読んで納得すればそれで済むことだったのに、
そうじゃない人たちが、なんか、あまりにも責め過ぎなんじゃないの、
というのは、ちょっと感じましたね。
24:10~
B:芦原さんの最後のツイート、ポストが、
「攻撃したかったわけじゃなくて」っていう。
K:そうなんですよ、だから。
B:脚本家の方に非難が集中しているけれど、
原作者に非難っていうのは、僕、見たことがないんですけど。
それなのに、原作者がこういうことを書くっていうのは、やっぱり、
SNSの誹謗中傷に心を痛められたのかな、と思っちゃいますけどね。
推察なので、あれですけれど。
K:ここ最近、本当に私自身が、いけない風潮だな、やめてもらいたいなって
思っているのが、すぐに対立構造でモノを語りたがる。これだって別に、
そこまで、脚本家さんと原作者さんが直接的に、
二人で対立していた話ではなかったように思うんですよ。
ただ、わかりやすいから「原作者バーサス脚本家」みたいな。
それで脚本家が意地悪をしたとか、原作者側につきます、みたいな。
対立構造で語ってしまっているから、原作者さんにしても、胸を痛めるような。
攻撃の意図なんかないのに、という……。
意見を言うのは、憲法で保障されている「言論の自由」みたいなものを重ねて
おっしゃる方もいらっしゃいますけれど。匿名で・・・
そのドラマがどういう形で作られるのか、
先ほども言ったように、脚本家ひとりの独断でなんて、絶対改変できないのに。
そんなことを知らずに、なにか脚本家が独りで、
原作を変えたかのように決めつけ、非難するっていう。
そこはやっぱりしてはいけないことだと私は思いましたし、
それは本当に、皆さんにお伝えしたいなと思って、
今回、時間を設けさせていただいているんですが。
26:46~
S:芦原さんのブログを読んだときも、
何度もプロデューサーの方に「違う」ってお願いしたのに、
原作通りにやってもらってる脚本は戻ってこなかった、
というのを書かれていましたけれど。やはり、連絡係のひとが……。
脚本家だって、いや絶対こっちの方がいいんだ、みたいな、
そんな「我」を、そこまで言われて通す人って、
あまりいないと思うんですけれど。
連絡がうまく取れていなかったっていう可能性が、高いですよね。
間に入った人が、連絡をちゃんと取ってなかったという。
B:第10話でしたっけ。結構長い時間かかる、
半年ぐらいかかる、連続ドラマって。
その間に、ケアレス・ミスだけじゃなく、
コントロール・ミスだったろうな、とは思っちゃいますね。
K:そうなんでしょうね。やっぱり本当に、もうみんな真剣に、
良いものを作ろうと思っているからこそ、やっぱり時には、
脚本家のほうも、ちょっと筆が滑ったりとかするし。
そういうことに対して、フィードバックが来て、
さあどうしようかっていう話し合いがなされて、っていうことを、
丁寧にやっていたら、起こらないことだったんじゃないのかな、
という気もしますし。
伴さんなんかもすごく経験があると思うんですが、
どうしたって時間に追われる部分ってありますよね、テレビドラマって。
その中で、ちょっとなおざりにしてしまう部分っていうのも
あったりするのが・・・。
29:05~
B:いや、『喰いタン』も『デカワンコ』も、時間に追われてましたけれど。
全くそこは、気にすることはなかったですけれどね。
『七瀬ふたたび』は結構時間をかけて。
全9話で、真ん中の3本は他の方に書いてもらったんですけれど。
丁寧に作ってましたね。
K:やっぱりその中で、
「原作まんまやるつもりがないんだったら、オリジナルをやれよ」
っていう意見が、今回の件でものすごく上がってきてるのがね。
オリジナルを書けもしないくせに、原作に頼っているのに、
なに改悪してるんだ、みたいな。
そういうツイートを読むたびに、ちょっと胸が痛むというか。
脚本家たちだって書きたいんですよ、オリジナルを書きたいんですよ。
オリジナルの企画が通らないという。
B:オリジナルで結構大変なのは、つまり、成果物が最初に見えないから。
原作ものだと、どれぐらい売れているかとか、
どこら辺に視聴者がいるのかとか、
それを求めてる人がいるのかって見えるし。
あと役者の着地点が見えてるという。
着地点が見えてないと芝居はできない、
というのはダメだと思うんですけれども。
そういう意味で、安心感があるんですよね、原作ものって。
K:そうなんですよね。
B:で、面倒くさかったのが、オリジナルでやった時に、
最終回までのプロットを作ってくれ、ということを言われて。
他の人も入れて、それを作ってもらったんだけど。
そんな、僕のスタイルはそんなの書いてみないとわからない、みたいな。
シチュエーションだけ決めて、その中で人を動かしていくっていう話が、
僕は多いので。全部のプロットを作れ、と言われたのは、
ちょっと苦痛でしたね。それは、役者向けだったんですけれど。
スポンサーに見せるためとかって言われたことは、ないけれど。
31:48~
K:企画が通った段階で、スポンサーさんが最後までって、
多分ないと思うんですね。
ただ、役者さんは、この後どうなるのか、知りたいので、
という方が多いですよね。
まず、受けるか、受けないかというところでも、
最初の1話、2話じゃわかんないんで、
この後・・・っていう方もいらっしゃるし。
実際に受けていただいてからも、これからの、もうちょっと何か、
役作りができないから、ちょっと先を知りたいとか、ありますもんね。
本当に、何かオリジナルやろうとすると、脚本家も大変だけど、
いろいろな人たちが、先が見えない分、大変になってきてしまって。
その辺り、ちょっと怠慢じゃないんですけど、
何かサボってしまっていた部分というか、甘えてしまっていた部分も、
あるのかも知れないですよね。
32:49~
S:作る側にとっては、原作がある、しかも売れている原作がある場合なんて、
局とかにとっては、ものすごい安心材料になるじゃないですか。
K:そうなんです、そうなんです。
S:だけど、やっぱり予算がない中で作るから、原作を改変したとか、改悪した、
みたいなことになっちゃうじゃないですか。
そうするとやっぱり、それを改変したのは・・・・・・
改変したって言われますけれど、予算がない中で作っていくから、
改変せざるを得ない部分とかも、出てくるわけじゃないですか。
そういうのって、どうやったら・・・予算を上げていくしかないですよね。
その問題を解決するには、一つは。
K:予算なんて、関係ない。
B:もう、ご理解いただくしかない。
K:丁寧にご理解いただくしかないですよ。
Z:どうしても理解できないっていう時には、その原作は使わない、
っていうことにした方が、いいんですよね。
K:うん。それしかない。
S:そうですよね。
K:それはやっぱり・・・約束できない約束はしちゃいけないし。
Z:まあ、そうですね。
K:本来はね。
S:時間がもう少し、調整する時間があれば、
こんなことにはならなかったんじゃないか、ということも言える……
Z:……し、どうなんだろう。本当に日本テレビに、
強制する気があったかどうかは、ちゃんと検証するべきですよね。
B:そこは、わかんない。
K:いやでも、やっぱり、そこら辺をきちんと知らせてくださいよって、
知りたいですよって声は、上がってくるとは思います。
B:ひとがひとり、亡くなったわけですからね。
35:43~
K:本当に、本当にもう、繰り返しますけど、あんまり、
どっちが悪いとか、言わない方がいいと思います。状況もわからないのに。
私人逮捕系ユーチューバーが、めちゃくちゃ、捕まってますけど。
私人逮捕と同じですよ、どっちが悪いかっていうのて。
そういう自覚をもとに、発言してもらいたいな、としか、
今は言いようがないんですよね。
だって、やっぱりそのケース、そのケースで
事情が出てくるんですよ、制作する上で。
今回も、いろんな推測や憶測が飛んでいますけど、
本当はどういうことがあって、ということなんて、わかっていないんだから。
「脚本家のせい」とか、断言するような発言は、本当にやめていただきたいな。
S:原作者の方だって、絶対こう、
命を削って作品を作ってるわけじゃないですか。
脚本家だってそうじゃないですか。それを軽はずみに、
対立構造に置いて批判しないでほしいです。本当に。
K:そう思います。
37:18~
K:コメントをいただいたので読みますね。ロックさん。
「脚本家の方も気の毒でなりません。仕事をしただけなのに。
10年以上前ですが、ETVで、大石静さんと、中園ミホさんと、田渕久美子さんが
出演されていた『トライアングル トーク』で、
“原作ものが多く、オリジナルをやらせてもらえない”という話をされていて、
“脚本家はストーリーを作らないと思われている”
“漫画家さんにはできることを、脚本家にはできないと思われている”
というようなことをおっしゃっていたのを、すごく覚えています」
(ETV特集『トライアングル トーク ~ドラマは女が創る~』・2010年)
伴さん、どうですか?
38:02~
B:みんな、オリジナルでやりたいと思っているんですよ、脚本家は。
で、原作ものでも、例えば同じ『セクシー田中さん』を、
今ここにいる4人が書いたら、全く別のものになるじゃないですか。
K:いや、伴さん。割り込んで申し訳ないですけど、
原作者さんはそれが嫌だったんですよ。
それをやらないでください、という前提で。
本来だったら、4人がいたら4人、別のものになるんですよ、映像化したら。
でも今回は特異で。それが嫌だから、原作通りにやってください、
っていう条件をつけての映像化だったんですよ。
B:僕が言いたいのは、だから、それだけ、
脚本家の占める割合も大きいということなんです。
K:本来だったら、そうなんですよね。
B:だから、僕はあの条件をつけられたら、やらないな、と思ったんですよね。
ただ紙に書いてあるものを、映像に撮りやすいように書くだけ、
という作業になっちゃうじゃないですか。
だから作家性は必要ないわけじゃないですか、我々の。
K:でも、悲しいかな、それを望んでいる人たちが、
あまりにも多いんですよね。原作トレースでやってくれ、みたいな。
Z:それは、視聴者層ですか?制作サイドですか?
K:視聴者層ですよ。視聴者層というか、原作ファンの方々ですよね。
Z:あー、そうですね。でも、原作ものをドラマ化するっていうのは、
もう原作ファンを、最初から想定しているじゃないですか。
K:そうなんです。ということは、じゃあ望むものは・・・ってなると、
やっぱり制作者サイドとしても、トレースの上手な脚本家さんでいいよ、
ってなるっていう。ただ、そうすると、
やっぱり作家(脚本家)が育っていかない、っていうね。
だんだん、だんだん、脚本家の力量が落ちて、
全体的に文化が縮小していくというか。
文化って母数を多くしちゃいましたけど。
そういう危機に瀕しているのかな、という感じはします。
40:25~
K:でも、伴さんは、アイコンに出ているんですけど、
これは伴さんの小説ですもんね。ミステリー小説をご自身で書かれているから、
「脚本家がストーリー書けない」っていうのは、ホントに大きな間違いなので、
皆さんにわかっていただきたいですよね。
B:自分の小説を、じゃあ誰か、他の脚本家に預けるかといったら、
どうしようかなと。ちょっと今回のことで、考えてしまったりするんですよ。
Z:伴さん、その原作の小説を、もし映像化するとしたら、
変えられるのは、やっぱり嫌ですよね。
B:というか、自分で書く・・・を条件にするかな、と思ったりしますね。
K:でも、もしも「他の脚本家さんじゃないと」って言われて、
渋々呑んだとした時に、やっぱり、意図を外して脚色されたら、
「違うだろ」って言いますよね。
B:うーん。でも「こうなるのか!」という面白さもあるのかな、
と思ったりしますけどね。ちょっとまだ、だからわからない。
実際、そういうオファーがあるとすごく嬉しいし、
その時に悩みたいと思いますけれど。
脚本家に信頼性が、「あ、この人なら」という風にこちらが思えれば、
僕は思えれば、渡すかなという気は、しないではない。
K:でも、やっぱりそこでも何か、信頼関係があって初めてできることですよね。
S:もし、伴さんが書かれた小説を映像化したいという話が来たら、
脚本家のひとに会ってみたいですか?
B:いや・・・だからそれもちょっと、考え中です。
K:(笑)
B:考えちゃいますよね・・・
あ、この人でOKを出すかどうか、ということではなくですよね。
そう。それは会って、「どうぞご自由に」って言ってあげた方が
いいかも知れないし。
あるいは「ここだけは変えないでくれ」と言うかも知れないし。
S:顔が見えないヤツが、ドラマのためとはいえ、
ちょっと改変しているっていうのは、気持ちの良いものでは、
確かにないかも知れないですね。原作者の立場に立ったら。
B:ある程度、見えるじゃないですか。
その人が今まで書いてきたものを眺めると、
「あー、こういう系統の人か。自分に合っているのか」みたいな。
僕はサスペンスも書いてますけれども、
そこで、僕でオッケーと言ってくれた人は、
昔のやつを見たりとか、周りの人がチェックして、
アドバイスしてくれたんだろうなと思いますね。
43:41~
K:私は、原作者の方に会いたくない派なんですよ。
B:うん。
S:ええっ。
Z:え、なんでですか?
K:いや、私が対峙するのは「原作」であって、
原作者の方はあまり関係ないかな、っていう。
B:ああ。
K:まあ、人それぞれで、やり方は違うので、なんですけど。
44:10~
K:ちょっとコメントを読みますね。ネネコさん。
「原作者さん、気の毒です。脚本家さんも気の毒です。
脚本は、原作を変えるように言われることも多いんですもんね」。
伴さん、多いですよね。恋愛要素を入れてくれ、とか。
B:ああ。
K:結構注文が付くことは多いですし。
役者さんが決まってから、変えてくれ、みたいなこともあったりしますよね。
意外と多いのが、役者さんからの要望というのも、あったりするのかな。
44:50~
K:オクさん。
「素人からすると、アニメは比較的原作に忠実で、
実写は原作から離れるイメージがありますね」。うん。
B:確かに。
K:これは、やっぱり二次元から三次元にするって、結構大きなことで。
S:そうですね。
K:肉体を持った役者さんが演じるとなった時に、
変えざるを得ないことが多いんですよね。
B:アニメって、原則シナリオを作らないで、
まんま原作を映像化するみたいな形って、
よくあると聞いたんですが。どうなんですか?
K:『鬼滅の刃』(2019年~)の脚本家って、未表示ですよね。
Z:制作会社名ですよね(シリーズ構成・脚本:ufotable)。
K:だからもう、映像化を想定したところで、全部作られている。
作られるケースって、これから多分アニメーションで、
増えてくるかも知れないですね。
S:宮﨑駿も、脚本は書かないで、
いきなり絵コンテから入っちゃうみたいですからね。
B:ふーん。
46:10~
K:この問題、脚本家はオリジナル書きたいです、ということは強く言いつつ。
B:某配信会社ですね、オリジナルの企画はやらないと。原作、売れているもの。
売れている原作しやらない、という風に決まっているらしいんですよ。
こうなると、オリジナルで書きたい。
それこそ「人のフンドシで相撲を取りたくない」じゃないですか。
どちらかというと。でも、その道も閉ざされているんですよ、一方で。
K:ほんと、その通りです。せめて配信だったらオリジナルやれるだろ、って
脚本家たちも思っていたんですけれどもね。
その道もちょっと閉ざされつつあって。
B:でも、ある局のあるテレビ枠は、なんで原作ものやらなきゃいけないの?と。
まあ、予算が少ないこともあって、オリジナルで作っていきましょう、
みたいなところも、あることはあるんですけれどね。
Z:予算が少ないと、オリジナルになるんですね。
B:まあ、自由にできるじゃないですか。
K:原作料を払わなくてもすむから。
テレビもだいぶ、予算が減っているみたいな話も聞きますし。
予算が減ると、かける時間も減ってしまう。
だから、丁寧な対応ができなくなったりという。
Z:悪循環ですね。
B:そうそうそう。
48:05~
K:まとめに入りたいと思うんですけれども。
原作者さんが、「攻撃したかったわけじゃなくて、ごめんなさい」
ってコメントを残されているのが、ほんとに切なくて。
謝る必要なんか全然なくて。
なぜかというと、最初から条件として出していた。
その約束を、どういう経緯かわからないけど、破られてしまった、という。
で、その経緯を説明しただけなんですよ。どうしてこういうことになったのか。
それは、やっぱり人として説明したいじゃないですか。
ファンの人もいらっしゃるし、いろんなところで誤解をするよりは、
ってなって。それをしただけで、全然謝る必要なんかないし。
誰が責めるべきことでもないし。
でも、「誰かを責めたい」人は、脚本家さんに向かってしまって。
でも脚本家さんも、やっぱり、自分の言われた仕事をしただけなんですよ。
だからその辺りは、やっぱり脚本家さんも責めてほしくないし。
ただ、状況が生んだ、なんか「ボタンの掛け違え」で、
こんなに世間が、対立構造を作って、
攻撃するような状況を起こしてしまったことが、
私はとても悲しくて仕方がありません。
はい、すみません。これが、私が今回、皆さんにお願いしたいことです。
本当に、今回の件に限らず、
皆さん好き勝手に言ってくださっていいんですけれど、
でも読んだ人は、匿名の、ただの思いつきの発言でも、
やっぱり脚本家として自分の作品が、何か、叩かれたりとかするのは、
皆さんが思っている10倍、20倍、実は傷ついているってことは、
わかっていただきたいな、と思っております。
50:04~
K:皆さんの方から何か・・・伴さん、最後にありましたら。
B:いや、もう今、黒沢さんがおっしゃったことが全てだと思います。
K:最後に、質問が来ているので、伴さん、お答えいただけますか?
コセキさんから。
「今回の件は、今後の脚本家の先生の仕事に、影響を与えると思いますか?」
という質問が来ているんですけれど。
S:どうだろう・・・・
K:どう思われます?
B:どうなんですかね。「脚本家が勝手に変えたんだ」
みたいな風潮が広まるのは、よろしくないし。
それで影響されることは、出てきちゃうかもしれないですよね。
K:本当に原作通りにやらないと、脚色は認められないようなことに、
なってしまいますかね。
51:14~
S:でも、本当に原作通りにやるとなると、
もうそれこそ、事務所からの要望も聞かない。
テレビ局側の都合も容れない、という風にやって、
本当に純度の高いものにできることって、あるんですかね。
そういう風にするしかないんでしょうけど。
K:それが求められている、世間の人が求めていることだよ、っていう風に、
制作サイドも判断してしまうと、そうなってしまうかも知れないですよね。
51:52~
K:じゃあ・・・今回、私が本当に、胸が痛んだツイートを最後に読んで、
ご意見いただいてもいいでしょうか。
とある方が、このようにツイートされていました。
「今話題の原作を蔑ろにしている○○○○さんって
『ミステリ』(と言う勿れ/2022年・フジテレビ)の脚本もなの?
大人になってからドラマ映画って初期設定が多少違うだけで
話の展開も恋愛も人間関係もほぼ同じに見えてあまり見なくなったの
もしかして全部原作の魅力をダメダメにしてる脚本家のせい??
全く同じようなつまらない展開は10代のうちならまだ見飽きてないけど
20代になったらまたこの展開かよって飽きてくるよね
水戸黄門()とかのお決まりの展開求めている人はそれ見てるだろうし
原作の設定だけ奪ってコピペして人気フリーライドするのが脚本家なの??
(原作から作ればいいのに)」
・・・というツイートがあるんですけど。
世間はこういう風に見ている方がいるのかな。
S:まあ、結構多いでしょうね。そういう風に見ている方は。
K:・・・ということです。ちょっと皆さん、お二人とも何か、黙り込まれて。
Z:文章が長くて、あんまり・・・
要は、全部同じような設定に見えてきちゃうってことですかね。
K:そうそう。それって結局、原作の魅力を全部消している、
脚本家のせいなんだね、っていう。
Z:あー。
K:そんな原作にフリーライドするのが脚本家の仕事なんだね。
だったらもう見ないよ、っていう。
Z:「脚本家のせい」って言うよりも、
プロデューサーの意見が入らない脚本って、ないじゃないですか、本来。
制作体制とか、その脚本を生み出す構造側に、
もっと大きな問題があるんじゃないのかな、とは思いますけどね。
54:09~
B:数日前に、CAさんとか、そのお友達とかと会ったんですけど。
それで「脚本家」って言っても、
どこまでやっている人か、まだ知らないんですよ。
そういう人たちって、プロデューサーが何をやるかも・・・
K:わからない。
B:更にわかりにくい仕事じゃないですか。
予算決めたりとか、キャスティングとか、全部やってるんだ、と言っても、
なかなかピンと来ない、みたいなね。
K:そうなんですよ。でも、そういう人たちの意見を採り入れ過ぎなのかも
知れないんですよね。
わからないんだから、わからない人にわかってもらおう、
とかっていうんじゃなく、
わからない人たちの意見みたいなものも、
今、SNSでどれぐらいフォロワーがいるかとか、
世間の認知度って、やっぱりSNS上で測ってしまう以上、
そこで声が上がった者が、神様のように扱われてしまって。
そこにみんなが、そっちを目がけて動いていってしまっているから、
状況変わらないかなー、みたいな。
55:27~
B:僕も、この件に関してツイート、ポストしたのは、
「両方に同情します」って書いたのに、
「そうやって擁護するんだ」的なリアクションがあったりとかね。
文章をちゃんと読んでよ、みたいなね。
僕は、そういうことをいろいろ説明するべきだと思うんですよ。
脚本家の仕事はどういうことで、プロデューサーはどういうことで、
みたいなことがね。最低限の知識は持ってほしいな、と思うことと。
K:だから、やっぱり脚本家として、こういう形できちんと、
脚本家ってどういうことをするのかっていうのは、
少しでもわかっていただけるように、
脚本家も努力していかないといけないのかも知れないですよね。
B:昔の映画とかの広告を見ると、必ず脚本家と監督が、
同じポイント数で表示されているじゃないですか。
これも作協(シナリオ作家協会)でずっとやっていることだけど。
氏名表示というのは作品に付いてくるんだけれども、
ポスターとかでも、脚本家の名前がなかったりとか。
あるいはさっきおっしゃった『鬼滅の刃』みたいに、
脚本家の名前が出なくて、会社名になっているとか。
そこら辺の、業界内での脚本家に対する扱いみたいなことも、
すごく軽くなっている感じがするんですよね。
K:そうですよね。
B:発信する側から変えていかないと、なかなか伝わってこないことも
あると思うんですよね。
K:もちろん、皆さんに見てもらって、
初めて作品って、成立するってところがあるわけですから。
そういう方々の意見も大切なんですけれど。
「10倣え」ではなく、やっぱりこちらの方が一歩先に立って
リードするぐらいの作品を、これから作り出していけたら、いいですよね。
57:46~
B:「人のフンドシ」っていう意識がちょっとあるじゃないですか、我々に。
K:うん、どうしても。
B:オリジナルでやりたいっていうね。
K:それはもう本当に。脚本家はオリジナルでやりたいと思っています、
ということは。そのために、本当にみんな、勉強してる方もたくさんいますので。
それだけ本当に、わかっていただきたいなと。
S:みんな、勉強はそこから入りますからね。オリジナルをどう書くかというところから。
K:本当にそうです。
B:あとは、脚本家自身が、この小説を映画化したいとか、
ドラマ化したいと思うこともあるじゃないですか。
そういう時は、直接本人に言います?
K:言います、言います。
B:それは幸せな出会いになるんじゃないかな。
K:なると思いますね。
Z:だから、これをきっかけにして、
「原作ものはやめよう」みたいな意識が業界に働いて、
素晴らしい原作が見過ごされるのも、悲しいじゃないですか。
K:もちろんです。そこら辺はもう、極端に走るのはやめましょうよ、
っていうのもありますよね。
Z:はい。
S:脚本家って頑張っているんだから。そんな原作改変とか、
そんなこと言わないでよ、っていう気持ちもわかりつつ、
実際に僕が逆の立場になった時に、好きな原作のドラマを見てみて、
何でこんな風にしてんだ、ということだって往々にしてあるし、
だから、別に「脚本家の肩を持って」とは言わないですけれど、
でも、いろいろ変えちゃってるのは脚本家だけじゃないよ、っていうのは、
知っておいていただければ、という気はします。
59:51~
K:ということで。今回は急遽、伴さん、ありがとうございました。
B:いえいえ、すみません。まともな話ができたのか。
K:いえいえ。脚本家、頑張ります、ということですし。
今回を教訓に、私たちも丁寧な仕事をしていきたいな、と思いました。
~60:00