クチコミズム〜2月のベストテン!

shimizu43102009-03-02

1.忘れられた皇軍(1963年/演出:大島渚
「歩く→待たされる→陳情する→引き返す」
その繰り返しという、実はあまりアクションの少ない展開を、
ニュース映画や軍歌、物珍しげに眺める野次馬の表情などを挟んで
「日本人よ、これでいいのだろうか!」という怒りのメッセージへと
ものの見事に料理してみせる構成(大島渚早坂暁)に脱帽。
彼ら皇軍を”忘れた”憎むべき存在として、
偶々通りかかった吉田茂氏(その年の秋に政界引退)が都合よく使われる、
その爽快な「偏向」ぶりに感激!
(お孫さんでそういうことをやると色々キケンかな……)
川崎市市民ミュージアム・ライブラリーコーナーで閲覧可能!
http://www.kawasaki-museum.jp/guide/annai/jouhou.html

2.はだかの王様(1964年/監督:高橋典)
劇団四季(浅利慶太)+寺山修司いずみたく、錚々たる顔ぶれの子どもミュージカルの映画版は、後にCM界で活躍した高橋典監督の才気煥発な細かい画面構成で、かなりシュールなスタジオ演劇に生まれ変わってました!ラストで舞台から飛び出した王様が、客席の子どもたちに「裸だ!」と指摘される演出が、子供時代に"8月15日"を経験した昭和ひとけたクリエーターたちの心意気を見るようでホロリとしましたよ。

▽短篇調査団(83)寺山の巻で上映
http://d.hatena.ne.jp/shimizu4310/20090211

3.木組・銅葺・漆喰壁(1981年/監督:堤哲朗)
建設メーカー広報部に勤務しながら建築・土木分野のPR映画を作り続けた堤監督が、撮影・照明まで独力で手掛けた「宮大工の仕事」の記録映画。専門用語が多いナレーションはよくわかりませんが、画面そのものが語りかけてくる、寄せ木細工のようにお寺ができていく工程そのものに目が釘付け(釘は使いませんが)。ものづくりの記録映画は、その過程そのものが面白いのはもちろんのこと、記録する人がどれだけその世界を愛しているかで映画の出来も違うんだなあ…と実感。
▽短篇調査団(84)大工の巻で上映
http://d.hatena.ne.jp/tancho/20090225/

4.あるがまま(2009年/監督:南田美紅)
追悼のざわめき』の"夏子さん"の現在と半生。それだけならよくある「情熱大陸」で終わるところを、彼女が「縁切りした」という実母の存在が気になって、撮影班が単独で故郷に向かうあたりから俄然スリリングに!彼女の話からイメージした母親と、実際にカメラの前に現れた母親のギャップこそが、家族と他人の視点の違いかも…なんて考えてしまいました。
日本映画学校 卒業制作映画発表会で上映
http://www.eiga.ac.jp/
▽『追悼のざわめき』(1988)予告

5.77BOADRUM(2008年/監督:川口潤
どう見ても雨乞いの儀式です。バカバカしい光景をキチンと撮ると感動的でさえあります。

6.3000万の署名 大国を揺るがす〜第五福竜丸が伝えた核の恐怖(2009年/ディレクター:森下光泰)
3月一杯で終了するというNHK大阪制作の「その時歴史が動いた」ですが、今のうちに!という感じで近現代史に踏み込んだ回が新鮮で面白いですね。原爆マグロと放射能の雨をきっかけに、新聞の投書欄から野火が広がるように原水禁運動が立ち上がっていく様子が、豊富な資料と再現映像で丁寧に語られていて、かなり泣ける出来映えに。番組終わるの惜しいなあ…(松平の殿様の名調子も聞き納めか…)
http://www.nhk.or.jp/sonotoki/main.html

7.裸の時代 ポルノ映画「愛のコリーダ」(1976年/演出:野田真吉
野田さん演出&金井勝さん撮影による、貴重な貴重な『愛のコリーダ』メイキング映像。「現場でやってること」のハードさを、あくまでもテレビ番組として至極冷静に紹介していくのがちょっと微笑ましかったりもします。
川崎市市民ミュージアム「戦後の作家展関連上映 映画監督・大島渚」で上映
http://www.kawasaki-museum.jp/display/cinema/

8.万年太郎と姐御社員(1961年/監督:小林恒夫)
大蔵新東宝の清純派・星輝美さんが東映移籍後にヒロインを演じた貴重な一作で、"テルミスト"(只今mixiに18人)はそのキュートなお姿にただただ感涙。高倉健さん主演の源氏鶏太サラリーマンものというレアな映画ですが、会社員気質から働く女性の立場、いいトシした大人たちのGUNブーム、観光アイテムとして使われるアイヌ文化などなど、良くも悪くも「昭和30年代の歴史観」がムキダシで終始ニヤニヤしちゃいました。ラブコメとしては東映らしからぬセンスの良さで、釧路の海岸で「我泣き濡れて蟹と戯る」健さんがチャーミング!
ラピュタ阿佐ヶ谷「にっぽんサラリーマン物語〜会社生活の希望と憂鬱」で上映
http://www.laputa-jp.com/laputa/program/salaryman/

9.ひゃくはち(2008年/監督:森義隆)
去年公開の気になる一作にようやくご対面。「野球の国」の民の生きざまが存分に描かれていて、夏の神奈川県大会決勝に応援に行ったことのある身として(←どんな身だ)とても面白かったです!惜しむらくは2時間切ってほしかったなー、あと題名がもう少しわかりやすければなあ…なんて思いましたが、これはかなり贅沢な注文。予備知識なしに名画座で出会いたい一本!

10.レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで(2008年/監督:サム・メンデス
オチが最高!
全編に溢れる熱演大会も、すべてはこのオチのためだったのか!
貴重な人生訓をいただきました(笑)

次点:レッド・ウォーター サメ地獄(2003年/監督:チャールズ・ロバート・カーナー)
想像通りの展開。想像通りのオチ。でもそこがいい!
▽我らが「木曜洋画劇場」で放映
http://www.tv-tokyo.co.jp/telecine/oa_thu_load/