徳川家広『バブルの興亡 日本は破滅の未来を変えられるのか』

バブルの興亡 日本は破滅の未来を変えられるのか (講談社BIZ)

バブルの興亡 日本は破滅の未来を変えられるのか (講談社BIZ)

未曾有の大暴落は、いつ日本人を襲うのか?
欧米の金融マフィアに精通した著者が、病んだ資本主義の終末を予言。


「危機の2年後には、必ずバブルが来る」
「バブル発生とその崩壊は、絶対に防げない」
歴史上の四大メガバブルをじっくり分析した著者は、
そこから「バブル経済のサイクル」をくっきりと浮かび上がらせる。
そして、それを大不況の現代に当てはめ、何と2011年から12年に、
日本に未曾有の巨大バブルが発生することを明らかにしてゆく。


さらに、そのバブルが崩壊した後は、
「廃墟経済」としか言いようのない状況になり、
銀行は大量に破綻し、企業は連鎖倒産し、
日本の不動産を中国人やロシア人が買いあさる。
失業率は30%を超え、売春と凶悪犯罪と感染症が激増して、
「先進国としての日本」は完全に終焉する――。


世界経済と金融のダイナミズムを知り尽くした
徳川将軍家直系19代目の著者が、ついに緊急書き下ろし!
amazonの紹介より)


ふだんなら、まず絶対に手にしないジャンルのこの本を
わざわざ図書館で探して読んでみたその理由は……
先輩だからです(笑)
類稀なるストーリーテラーとしての才能が存分に発揮されていて、
近未来SF小説として読んでも面白いですハイ!


本編(?)は大体上記のような物語なんですけど、
さすがだなーと思ったのは、
この「結末」を決して「悲惨な末路」として捉えていないんですね。

「廃墟経済」になっても、仕事が日本からすべて消えることはない。ただ、求められる能力のわりに報酬の高い「おいしい仕事」が消滅するだけのことだ。その結果、「格差社会」と言われている現在の日本の、さしたる根拠もなく恵まれてしまっている層が大打撃を受けるのである。同じ労働であれば報酬は同じになり、労働市場はわかりやすい能力主義へと移行していく。人々の労働意欲や生産性は、全体として向上するのではないか。(p.266〜267)

うーん。達観してますねー。


で、このスタンスはどこから来るかというと、

私は徳川将軍家の直系として生まれ育ったため、江戸幕府の瓦解と大日本帝国の崩壊という、普通に考えればすでに歴史上の出来事となっている二つの国家体制の滅亡を、まるでわが事のように感じながら生きてきた。これは一面ではなかなか辛いことなのだが、おかげで、超悲観論としか言いようのないシナリオをわりと冷静に考えられるようになったのは、プラスだったと思う。(p.269)

さすがは大政奉還してきたお家です。
つまり、「マネー敗戦 (文春新書)」どころじゃない、
「マネー大政奉還」だってどんとこい!という姿勢が
すがすがしいですね。「そりゃそうだ!」と江戸の町民も納得です。
台風の後に晴れわたった夏の空が出てくるような読後感。
いっそ映像化するといいんじゃないでしょうか!
何年かおきに経済モノにチャレンジする東映あたりで
映画化を検討してくれないかなあ。
(「暴れん坊将軍」もやってたんだし)


あと、こちら↓の映画版(ポール・グリーングラス監督!)の
字幕の翻訳もされているそうなので見なくちゃです。

グリーン・ゾーン

グリーン・ゾーン