『ラブドール 抱きしめたい!』

10/23(金)までユーロスペースでレイトショー
http://www.lovedoll-movie.com/
予告編→http://www.youtube.com/watch?v=JDcIMnVXp60


一部ではサブカル映像民俗学とまで呼ばれ始めた(←大袈裟)
ムラケンこと村上賢司監督の最新作。
予告編を見る限りでは良い意味で裏切られるかと思って(笑)
ようやく劇場に行ってまいりました。
岩永洋さん*1の美しい撮影、中川究矢さん*2のシャープな現場録音で
イマドキのビデオドキュメンタリーを軽く凌駕するような格調の高さが出ていて、
かなりワクワクする時間にはなっているのですが、
70分見ていて気になったのは「誰の視点なのか」ということですね。
ラブドールをまるで生きているかのように撮っているのは「誰」なのか。


たとえば、幼なげな「キララ」さんを愛情こめて撮っているのは、
もしかしたらお子さんを亡くされたご夫妻なんじゃないだろうか…とか、
夜、帰宅したところに台所でハダカエプロンの「空」さんを待たせているのは
『空気人形』の板尾創路さんみたいな人なんだろうか…とか、
台詞やナレーションがなくても、設定だけで物語が語れてしまう、
とても「おいしい」映像が撮れていると思うんですが、
あんまりそこには自覚的でなかったような。
構成・編集の時点で、あと一匙の味付けがあれば…という
もったいなさを感じたりしました。


秋葉原の風景の切り取り方なんかも、すごく面白いメタファーになっているのに、
いまひとつうまく組み込んでいけていないというか…。
(例の事件の現場も、もう少し長く見せてほしかった……)


撮った素材ともう少し"対話してみる"と、
同じ素材でも、かなり見え方の違う構成が生まれたのかも。
(松川八洲雄監督の『ある建築空間』(1964)や『土くれ』(1972)は、
 「何もそこまで…!」と言いたくなる"対話編集"の極致でした。
 一見をお薦めしたいです)


「どんなに団子が美味しくても、串がないと食べにくいんだなあ」
ということに、今更ながらに気づいたのでした。


というわけでムラケン監督、勝手なことを申しましてすみません。
次回作も期待してます!!