岸富美子『はばたく映画人生 満映・東影・日本映画』

はばたく映画人生―満映・東影・日本映画 岸富美子インタビュー (La vie en双書)

はばたく映画人生―満映・東影・日本映画 岸富美子インタビュー (La vie en双書)

こちらも超貴重な企画。満映から東北電影に参加して
革命中国初の劇映画『橋』(1949)『白毛女』(1950)の編集を手掛けた
岸富美子さんの回顧録
(参考記事→気合の革命歌劇! - 4310
帰国後は『流血の記録 砂川』などにも参加されています。
そういえば2006年のETV特集『中国映画を支えた日本人』で、
満州を再訪された岸さんのお元気な姿がとても印象的でしたね。
映画論叢」の隣にこの本を並べてくれた
新宿西口ブックファーストさんありがとう!

春日太一『天才 勝新太郎』

天才 勝新太郎 (文春新書)

天才 勝新太郎 (文春新書)

『時代劇は死なず!』がかなり面白かった
若き時代劇研究家・春日さんの新刊が出てたんだ!
まだ読みかけですけど、とりあえず途中報告として、
伝説の「台本なしドラマ」として噂に高い
新・座頭市2第10話「冬の海」、
その演出打合せの録音テープ書き起こし(p.17〜29)が凄いです!
勝新先生の「即興コンテ」がむちゃくちゃ面白い!
しかしこんな現場に関わったら猛烈にヤバい!(笑)
と言いたくなる、迫真のドキュメントですね。
『影武者』の現場で撮りまくってた(&黒澤天皇に怒られた)という
「自分用記録ビデオ」も見てみたいなあ。
編集次第で、面白いドキュメンタリーになるんじゃないでしょうか。

川谷拓三『3000回殺された男 拓ボンの体当たり映画人生』

3000回殺された男―拓ボンの体当たり映画人生

3000回殺された男―拓ボンの体当たり映画人生

今週はなぜか川谷父子読書週間(図書館に感謝!)
今年たまたま見た『松山城』(1970)に
お父さんが撮影部で参加されていたのと、
その後NHKの「あの人に会いたい」で
息子さんを拝見したのがきっかけで。


お父さんの中国大陸冒険譚(&武勇伝)は、
幾らかの誇張もあるでしょうが面白いですねえ。
満州からの引き揚げ後しかご存知ないらしい息子さんにとって、
お父さんへの評価は相当に低いみたいですが、
(京都に行って初めてお父さんの高名ぶりを知ったそうで)
息子さんの「付き人から見たスター像」も
低姿勢ながらも反骨心が滲み出ていてニヤリとさせられます。
ちなみに「僕が師事した11人の先生方」(p.80より)は、順番に
伊沢一郎さん*1山形勲さん、平幹二朗さん、宇佐美淳也さん、
星十郎さん、大川橋蔵さん、内田良平さん、中村メイコさん、
香山武彦さん、松方弘樹さん、
そして鶴田浩二さん(最長&最後の師)だそうです。
(香山武彦さんの付き人は辛かっただろうなあ……)


▽なるほどメモ

中国では「劇を見にいこう」とはいわない。「劇を聴きにいこう」という。
劇場に行くことを聴戯(ティンシー)という。字のように、見るのではなく、聴くのである。
(p.97-98 第二章 中国へ「京劇俳優・尚小雲と小翠花」)

↑京劇は声が第一、というお話で。勉強になるなあ。

室田日出男先輩になにかと面倒を見ていただくようになったのも『仁義なき戦い』がきっかけであった。この人はかつて東映の契約俳優の先頭に立って会社と闘った人で、反体制の権化のような人でもある。いいかえれば、理不尽なことが大嫌いで、どんなに強い相手だろうが果敢に真正面から飛びかかっていく。おかげで何度となく無茶なケンカに巻き込まれたが、義侠心も厚く、それだけに後輩からは面倒見のいい先輩としてとおっていた。
(p.166「忘年会にも呼ばれない嫌われ者が『ピラニア軍団』」)

↑先週『怪猫トルコ風呂』を見た時も室田先輩を応援しちゃいました。
(理不尽極まりない役柄でしたが…)

*1:母方の叔父さんだそうです。

川谷庄平・山口猛『魔都を駆け抜けた男 私のキャメラマン人生』

魔都を駆け抜けた男―私のキャメラマン人生

魔都を駆け抜けた男―私のキャメラマン人生

日本プラモデル工業協同組合・編『日本プラモデル50年史』

日本プラモデル50年史 1958-2008

日本プラモデル50年史 1958-2008

図書館で発見。資料たっぷり歴史もしっかりで面白いです!
戦時中の模型特需、子供たちに敵戦闘機を組み立てさせて
「軍の識別訓練用に」献納させる…という国策のこととか、
戦後のブリキ・セルロイド・ビニール玩具との関連とか、
「作られたブーム」としてのスロットレーシング(マブチモーター大活躍)とか。
大昔、近所の駄菓子屋さんで入手してしまった謎のプラモは
日東科学の「走る大巨獣ガッパ*1だったのか!とか
無駄な発見に満ち溢れています(笑)
ぜひ図書館でお読みください(かなり重いんです)
このテーマでどなたかがドキュメンタリーを作ってくださったら…


と思ったら今夜こんな番組が↓

24:10〜24:40(30分)NHK総合
番組たまご GLOCALジャポン「静岡プラモデルの巻」
「ドラマ+ドキュメンタリーでクールジャパン誕生の秘密を探る新タイプの番組。世界シェア50%以上という静岡のプラモデル。その意外なルーツやヒット開発の裏側を探る。」
出演:小島聖伊達暁ゴルゴ松本
http://www.nhk.or.jp/tamago/program/20090929_special.html

大阪府立文化情報センター・編『「プガジャ」の時代』

「プガジャ」の時代 (新なにわ塾叢書1)

「プガジャ」の時代 (新なにわ塾叢書1)

先週からゆっくり楽しんでます。
お話の中に出てくる各種固有名詞への注釈が素晴らしいです!

森英二郎エルマガジン大毎地下劇場/演劇センター68/70/グループ無国籍/シネマ自由区=フリーク=/京一会館/オレンジルーム/伴睦人/毎日文化ホール/一瀬隆重竹中功(吉本興業)/チャンネルゼロ漫金超/有文社/森喜久雄(モリスフォーム)/日下潤一/糸川耀史/ビレッジプレス/ポンプ(全面投稿マガジン)/Q(版元は朝日放送)/バナナホール村上三郎(具体美術協会)/ギャー横丁/コミックジャングル/Gスコープ/パーキージーン・シアター/心斎橋筋2丁目劇場香川登枝緒(79年に登志緒から改名)/拾得=じっとく=/磔磔=たくたく=/バーボンハウスチキンジョージ/エッグプラント/のいづんずり/EP-4/なげやり倶楽部/雀三郎製アルカリ落語の会/寿歌=ほぎうた=/扇町ミュージアムスクエア(OMS)/ヤンタン(MBSヤングタウン)/URCレコード/精華小劇場/名古屋プレイガイドジャーナル労音(勤労者音楽協議会)/演劇師★団/七ツ寺共同スタジオ/京大西部講堂/微笑家族/たまらん人々/近鉄劇場/満開座/松田正隆/鈴江俊郎/土田英生……etc.

「関西からも岸田戯曲賞の作家が何人か出ましたけれども、
 そういう才能のある「人民の海」だと思ってますから、関西は。」
という最後の編集長・小堀純さんの言葉(p.289)に納得します。


ついでに我が家にある一番古い「プガジャ」を引っ張り出してきて
その目次を採録しておきます。


プレイガイドジャーナル(ぷがじゃ)1984年9月号 180円

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池島ゆたか+松島政一『PG No.105 すべての死者よ、甦れ!』

通販はタコシェで↓
P.G 105 〜池島ゆたかが見た、生きた、ピンク映画傍証50年史〜 - タコシェオンラインショップ

ようやく買いました!すごく面白かった!!
橋本治さんによる『鞍馬天狗のおじさんは (ちくま文庫)』の解説で
無人島に持っていく一冊という話があるけど、この本を読み終わった時、まさに私は無人島にいた」
といった感じの名言(↑うろ覚え)がありましたが、
池島ゆたか監督100本記念のこの本(PGの別冊では勿体ないボリューム)も、
読み出したら最後、笑えて泣けてびっくりして、
おかげで昨夜は無人島に一泊しました!
ピンク映画史は勿論、現在のピンク映画の企画から興行まで、さらには
新宿国際のやる気のなさの秘密までわかっちゃう驚愕の一冊(大袈裟)
充実の174ページ、その目次をメモしておきますと…

CRANK IN はじめに/池島ゆたか
SCENE 1 初期ピンク映画受容史
SCENE 2 アングラの風、吹き荒れる時代
SCENE 3 劇団・天井桟敷
SCENE 4 池島ゆたか 青春放浪編
SCENE 5 ピンク映画の世界へ
SCENE 6 多士済々?ピンク監督列伝
SCENE 7 役者・池島 絶好調時代
SCENE 8 早すぎた異才 細山智明
SCENE 9 役者孫悟空
SCENE 10 ザ・監督 稲尾実*1
INTERMISSION 劇団セメントマッチ
SCENE 11 監督デビューまでの長い道程
SCENE 12 プロデューサー・小松俊一*2との日々
SCENE 13 銀幕の女優たち
SCENE 14 自然児 橋本杏子
SCENE 15 ピンク大賞変遷史
SCENE 16 去っていった女たち
SCENE 17 僕らが去らせた林由美香
SCENE 18 不屈の男たち
SCENE 19 画面を彩る男の色気
SCENE 20 産業としてのピンク映画
SCENE 21 ヘンリー塚本*3の欲望世界
SCENE 22 忘れ得ぬ実相寺昭雄監督
SCENE 23 マイスター・志賀葉一*4
SCENE 24 監督100本記念映画
SCENE 25 いつもNext oneを
FILMOGRAPHY 池島ゆたか監督作品リスト
CURTAIN CALL 解説/林田義行

演劇界・映画界・そしてAV界と、出てくる人みんな面白いんですが
(なぜかイッセー尾形さんや松尾スズキさんの初舞台まで出てきます)、
特に一人で一章分ある方々、
「早過ぎた脱力系」細山智明さん、「アッチョイ」の稲尾実さん、
「よござんすね」の小松俊一さん、「演じるのは四日が限界」の橋本杏子さん、
移動車を自作する志賀葉一さん、「ヨーイ、オッケー」のヘンリー塚本さん…
の面白さは格段にすごいです。


個人的には沢賢介監督のこのエピソードが大好き。

函館山はすごい強風でね。監督、自分でキャメラ回してるでしょう。カツラが飛びそうになったの、一瞬。パッと頭押さえるのよ。押さえながら、片手でカメラ回してる(笑)。俺、よっぽど隣りで、
「監督、頭、僕、押さえましょうか?」
って言おうかと(笑)。だって、カメラ、ブレまくりなんだもん。後で観たらさあ、本当にブレブレにブレちゃっててさあ。皮肉言われたよ、会社のプロデューサーに。
(p.34「SCENE 6 多士済々?ピンク監督列伝」より)

うーん、いい話です(笑)
沢監督は日映で従軍カメラマンをされていたそうなので、
35mmのカメラもご自分で回してたんですね。
(西原儀一さんや市村譲さんも確か監督撮影兼任)

*1:またの名を深町章荻西太郎

*2:日活出身。著書に『俺の裕次郎―ひとりの若者に青春を賭けた日活宣伝マンの"熱い日誌"』。

*3:FAプロ代表。http://www.fa-pro.com/

*4:"志賀洋一"は誤り。またの名を清水正二